「AIと著作権」について、AIを少しでも使うなら必ず押さえておかなければいけない超重要ポイント3点

法律情報

池袋の弁護士、田村優介です!今日はAIと著作権の話です。

最近、「AIと著作権」について法律相談いただく機会がちょくちょくありました。

これを機会に私の方でも改めてまとめ、勉強しましたので記事の形にしました。

ここ数年での生成AIのとてつもない勢いの発展で、AIが生成したコンテンツ(AI生成物)と著作権の関係が注目されています。

AIは、小説、音楽、絵画、プログラムコードなど、従来人間が行ってきた創作活動を模倣して代替し、さらには凌駕する可能性までも秘めています。

日本法の著作権の基本的な考え方、AIについての政府の現在の基本的な考え方については、下記、文化庁の令和5年度セミナー「AIと著作権」の資料がよくまとまっていますのでこちらを参照するのが良いと思います。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/93903601_01.pdf

文化庁はその他にも著作権に関して豊富にテキスト等を公開していますので、興味がある方、必要な方はぜひご活用ください↓

著作権 | 文化庁
デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方について掲載しています。

著作権法の基本的な考え方(飛ばしてもok)

基本的なことはわかっていて、AIが絡む場合のことをピンポイントで知りたい方は読み飛ばしていただいて大丈夫です。

著作権法の目的:そもそもなぜ著作権という権利があるの?

著作権法は、「著作者等の権利・利益を保護すること」と、「著作物を円滑に利用できること」のバランスを図り、新たな創作活動を促進し、「文化の発展に寄与すること」を目的としています(著作権法1条)。

著作物の定義

著作権法が保護しているのは「著作物」です。

「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したもの」であって、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されています。

単なる事実の記載やありふれた表現、アイディアそのもの(作風、画風と呼ばれるものや、舞台設定、新しく考え出したゲームのルールなど)は著作物には該当せず、著作権法による保護の対象外となります。

著作権がないものの例

  • 「事実の記載」 例:「2024年8月4日は日曜日だ。」という文章
  • 「ありふれた表現」 例:「レオナルドダヴィンチは人類史上稀にみる天才だった。」という文章
  • 「舞台設定」 例:小学生の元に未来からロボットがやってきて一緒に生活が始まるお話し
  • 「ゲームのルール」 例:カードにそれぞれパラメータなどが記載されていて、プレイヤーが交互に提出しバトルをする、というアイデア

著作者と著作権者

著作者著作物を創作した人。
著作権者著作物を創作した時点で、著作者は何の手続きも不要で自動的に「著作権」(および「著作者人格権」)を取得し、「著作権者」となります。

特許や商標などの権利は、申請をして初めて権利が生じます。
ですので、発明をしたり独創的な商品名を思いついた場合は、申請を検討した方が良いです。

これに対し、著作権は、全く何もしなくても、創作物を作った時点で権利が生じているのが大きな特徴です。

著作者の権利

著作権には、複製権、上演権、演奏権、上映権、公衆送信権など、著作物の利用形態ごとに権利(支分権)が定められています。 著作物を利用するには、原則として著作権者から許諾を得る必要があります。

著作権侵害

他人の著作物を、権利者から許諾を得ておらず、権利制限規定にも該当しないにもかかわらず利用した場合は、「著作権侵害」となります。

著作権侵害と認められるには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

要件内容
類似性既存の他人の著作物と同一または類似していること。
他人の著作物の「表現上の本質的な特徴を直接感得できること」が必要とされます。
アイデアやありふれた表現は類似性に含まれません。
依拠性既存の著作物に接して、それを自己の作品の中に用いていること。
既存の著作物を知らずに偶然に一致した場合は、依拠性は認められません。

AIと著作権

AIと著作権について知りたい方は、ここからお読みください!

AIと著作権の関係は、「AI開発・学習段階」と「生成・利用段階」の2つの段階に分けて考える必要があります。

また、AIが生成したコンテンツ(AI生成物)が著作物に該当するかどうかは、別の問題として考える必要があります。

「Canva」のAI画像生成を用いて、ロボットが絵を描く様子を生成してみました

AI開発・学習段階における著作物の利用

AI開発・学習段階では、大量のデータ(学習用データ)を用いてAIの学習が行われます。この学習用データに著作物が含まれている場合、著作権法上の問題が生じる可能性があります。

従来、著作物を学習用データとして収集・複製し、学習用データセットを作成することは、原則として著作権者の許諾が必要でした。 しかし、AI開発においては、数十億点にも及ぶ大量の学習用データについて個別に許諾を得ることは困難であるという課題がありました。

2018年の著作権法改正により、情報解析に用いる目的で著作物を利用する場合など、「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用」については、著作権者の許諾なく行うことができる、という新たな権利制限規定が設けられました(著作権法第30条の4)。

ポイント①
現行法上、AI開発、学習段階の著作物の利用は、許諾なしで可能。

しかし、以下のような場合は、この権利制限規定は適用されません。

  • 主たる目的は非享受目的であっても、享受する目的が併存している場合
  • 「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」 (情報解析用に販売されているデータベースの著作物をAI学習目的で複製する場合など)

 ここでキーワードになるのは「享受」です。
小説などであれば読んで、音楽などであれば聴いて、人間が楽しむ目的も果たしてしまっているような場合は、原則通り許諾なければ著作物は利用できません。

生成・利用段階における著作物の利用

生成・利用段階では、AIを用いて生成されたコンテンツ(AI生成物)の利用が問題となります。AI生成物を利用する場合でも、著作権侵害となるか否かは、人がAIを利用せずコンテンツを作成した場合と同様、と考えられています。

ポイント②
AIが作成したものも、人間が作成したものと同じ基準で著作権侵害の有無を判断する。

これまでの人間によるコンテンツと同様、「類似性」と「依拠性」によって判断するということです。

類似性なし類似性あり
依拠性なし非侵害非侵害
依拠性あり非侵害著作権侵害

AI生成物に既存の著作物との類似性や依拠性が認められない場合、著作権者の許諾なく利用することができます。

類似性と依拠性が認められるAI生成物を利用する場合は、著作権者の利用許諾を得るか、権利制限規定が適用される場合に限り、利用が可能です。

私的に鑑賞するため画像等を生成することは、私的使用のための複製に該当し、AIの生成物であっても人間の作品であっても著作権者の許諾なくokです。

生成した画像等をアップロードして公表したり、印刷して販売する行為については、権利制限規定に該当しない場合が多いと考えられます。そのため、既存の著作物との「類似性」及び「依拠性」が認められるAI生成物について、こうしたアップロードや販売を行うには、既存の著作物の著作権者の利用許諾が必要です。

AI生成物は著作物となるか

AI生成物が著作物に該当するかどうかは、人が思想感情を創作的に表現するための「道具」としてAIを使用したのか、AIが自律的に生成したものなのかによって判断されます。

人が思想感情を創作的に表現するためにAIを使用したと認められるためには、人の「創作意図」と「創作的寄与」が必要となります。

この点については、まだ世界でも日本国内でもさまざまな議論が行われている段階ですが、特にビジネスでAI生成物を利用しよう、という場合には慎重側にレバーを倒して進めることが弁護士としてはおすすめです。

創作意図思想又は感情を、ある結果物として表現しようとする意図のこと。
創作的寄与AIを用いた創作過程において、人がどれほど創作に関与したか。
AI生成物の場合、AI利用者のどのような行為が「創作的寄与」に当たるのか、AI技術の進展に合わせて引き続き検討していく必要があります。

AIを利用する際に気を付けなければいけないポイント

AI利用者としては、著作権侵害とならないよう、AI生成物を利用する際は次の2点に注意すべきです。

  • 権利制限規定(私的利用、非享受など)とはいえず、許諾が必要な行為になっていないか
  • 既存の著作物と類似性のあるものを生成していないか
ポイント
AIが生成したものを利用するなら、既存の著作物と類似していないか、自ら確認する!

既存著作物の権利者側の対応

既存の著作物の著作権者としては、自身の著作物と類似したAI生成物が無断で利用されている場合は、著作権侵害として、利用行為の差止請求・損害賠償請求といった民事上の請求をすること、刑事処分を求めることといった対応ができると考えられます。

まとめ

AIの発展は驚くほど急速で、今後AIに関する著作権の考え方や法規制は早いペースで変化していく可能性があります。常に情報収集を怠らず、賢くAIをビジネス、生活等に活用していくことが求められます。

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