業務時間外にも上司からラインで連絡が来て仕事モードから切り替えられない!「つながらない権利」とは?

労務トラブル

夜10時に上司からラインが!

こんなご相談がしばしば寄せられます。

相談者
相談者

仕事上、プライベートのラインでも連絡を取れるようにするよう言われて、嫌だったのですが上司の指示だったのでやむなくラインを教えました。

すると、夜10時などの時間にも、「明日朝イチで○○をやってほしい」のような連絡が来るようになってしまいました。

「返事は明日でいいから」と書いてあっても、プライベートでスマホを触っているとラインが見えてしまい仕事のことを思い出してしまって心が休まりません。

連絡を拒否することはできないのでしょうか?

お気持ちとてもよくわかります。

この問題はヨーロッパでいち早く「つながらない権利」として議論され、一部の国では法律に盛り込まれるようにもなりました。

「つながらない権利」とは、「勤務時間外や休日といったプライベートの時間に、仕事上のメールや電話への対応を拒否する権利」のことです。

世界の動き

2016年のフランスで、改正労働法の中に世界で初めて盛り込まれ、世界中で話題になりました。

フランスでは、従業員50人以上の企業は、従業員は勤務時間外のメールなどを遮断する権利を有することを定款に明記しなければならない、ことが義務付けられました。

その後、世界各国で、「つながらない権利」に関わる法改正などが始まり、進行中です。

日本ではどうなっている?

日本では、「つながらない権利」は法律にはまだ盛り込まれていません。
ただし、厚労省は2021年にテレワークに関してガイドラインを出し、

テレワークにおいて長時間労働が生じる要因として、時間外、休日又は深夜に業務に
係る指示や報告がメール送付されることが挙げられます。
そのため、役職者等から時間外、休日又は深夜におけるメールを送付することの自粛を
命ずること等が有効です。

https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000683359.pdf

として、テレワークの長時間労働防止のためメール送付の自粛が有効である、という限度では言及しています。

また、勤務時間外のメールは従業員の負担になるとして、禁止する企業も現れているようです。

そもそも勤務時間外にメッセージなどを送って良いのか

まず、勤務時間外に従業員にメッセージや電話で連絡してその場で対応させることは、当然、時間外労働となり、残業手当の支払い義務が生じます。

では、ご相談者さんのように、「返事は明日でいいから」として対応は求めていないものの勤務時間外にメッセージを送る行為はどうでしょうか。

現状の日本の法律及び裁判例の動向では、これがただちに違法であるとか、時間外労働が発生したので残業代が発生する、とすることはまだ難しいように思います。

ただし、法律や判例は国民の多数が「こうした方がより正しい、世の中が良くなる」と考えることにより変わっていくものです。勤務時間外にラインの通知がされることは良くない、と考える人が多ければ、世の中は変わっていく、と私は考えます。

また、法律とは別に、社会の感覚が変わっていくということもあります。皆が「勤務時間外にラインを送るのは非常識」と考えるようになれば、意外と短い期間で世の中が変わる、ということはあると思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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