最近、ニュースなどで「個人事業主」「業務委託」「ギグワーカー」「フリーランス」などなどの言葉を耳にする機会が増えましたね。
これらは、会社で働く「労働者」とは違う働き方のことです。
しかし、この「労働者」と「個人事業主」の線引き、実はなかなか難しいんです。
2023年12月、厚生労働省は「軽貨物ドライバー」の労働者性に関し、注目すべき資料を公開しました。
私なりにわかりやすく解説していきます。
労働者ってどんな人?
日本には、働く人を守るために「労働基準法」という法律があります。 この法律は、全ての働く人に当てはまるのではなく、「労働者」だけに適用されます。 では、「労働者」とはどんな人を指すのでしょうか?
労働基準法では、「労働者」を
「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」
と定義しています。
つまり、誰かの会社の仕事をして、その対価としてお給料をもらっている人が「労働者」と考えられます。
労働者かどうかを見分けるポイント:「使用従属性」
では、具体的にどうやって「労働者」かどうかを判断するのでしょうか? そのポイントとなるのが「使用従属性」です。これは、簡単に言うと「会社からどれくらい指示や命令を受けて働いているか」ということです。
使用従属性を判断する基準2つ
1.
指揮監督下での労働: 会社から仕事の指示や命令を受けているか、自分のペースで自由に働けるのか。
2.
報酬の労務対償性: もらっているお金が、労働の対価として支払われているか。
具体的な判断は、契約書の内容だけでなく、実際の仕事の進め方や報酬の支払い方などを総合的に見て判断されます。
軽貨物ドライバーの事例
それでは、実際に判断が難しいケースとして挙げられる軽貨物ドライバーを例に見ていきましょう。
軽貨物ドライバーの中には、「業務委託」という契約で働いている人が多くいます。 この場合、一見すると「個人事業主」のように思えますが、 実態として「労働者」と判断されるケースも少なくありません。
いくつかの事例を挙げながら、詳しく見ていきましょう。
事例1:指揮監督と拘束性
ある軽貨物ドライバーは、荷主から提供されるアプリで配送ルートや荷物の量が決められていました。 また、配送状況は常にアプリで把握され、会社から指示を受けることもありました。
さらに、1日の労働時間は決まっていないものの、荷物の量から事実上12時間以内に制限されていました。
このケースでは、会社からの指示や拘束性が認められたため、「労働者」と判断されました。
事例2:契約内容と実態の違い
別のドライバーは、契約上は自由に仕事を受けられることになっていましたが、実際には断ることができませんでした。 また、配送ルートや時間帯も会社から指定され、それに従わない場合は罰金が科せられることもありました。
このように、契約内容と実際の仕事の仕方が異なる場合も、「労働者」と判断される可能性があります。
事例3:日給制と時間外労働
また、日給制で働いていたドライバーが、時間内に荷物を配りきれず、サービス残業を強いられていたケースもありました。
このような場合も、労働時間に応じて報酬が支払われていないことから、「労働基準法」で定められた権利が守られていない可能性があります。
まとめ
今回は、軽貨物ドライバーの事例を通して「労働者」の定義について解説しました。
「個人事業主」として働く場合でも、「労働者」と同様の権利が保障されるべきケースもあります。
働く上では、自分がどのような立場なのか、しっかりと理解することが大切です。
ブログ記事では、軽貨物ドライバーの事例を通して「労働者」の定義について解説しましたね。
「もっと詳しく」とのことですので、ここでは事例で取り上げた「指揮監督」「拘束性」「報酬」について、もう少し詳しく説明していきます。
事例1:指揮監督と拘束性について
ブログ記事では、会社から提供されるアプリで配送ルートや荷物の量が決められていたり、配送状況を常にアプリで把握されている状況を「指揮監督」と説明しました。
指揮監督とは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか?
では、「指揮監督下での労働」に関する判断基準として、以下の4つの項目が挙げられています。
●
仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由
●
業務遂行上の指揮監督
●
拘束性
●
代替性(指揮監督関係を補強する要素)
アプリで配送ルートや荷物の量が決められている場合は、「仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由」に該当します。 つまり、ドライバーは、会社から一方的に仕事を指示されていると判断される可能性があります。
また、配送状況が常にアプリで把握され、会社から指示を受ける状況は、「業務遂行上の指揮監督」に該当します。
の事例では、「配送状況に応じて元請事業者から随時指示がなされているほか、配送時のルールについても定められ、指示が行われていた」ことから、指揮監督ありと判断されています。
拘束性は、「実質的に拘束されている時間」を指します。
の事例では、「始業・終業時刻の定めはないが、1日の作業時間を12時間以内にすることを前提に、1日当たりの配送を行う荷物量が定められている」ことから、拘束性ありと判断されました。
このように、一見自由な働き方のように見える軽貨物ドライバーでも、指揮監督や拘束性の高さから「労働者」と判断されるケースがあることを理解しておきましょう。
事例2:契約内容と実態の違いについて
の事例では、「契約上は自由に仕事を受けられることになっていましたが、実際には断ることができませんでした。」という状況が、「労働者」と判断される可能性があると説明しました。
契約書の内容と実際の働き方が異なる場合、どちらが優先されるのでしょうか?
結論から言うと、実際の働き方が優先されます。 労働基準法では、労働者を保護することを目的としているため、契約書の内容よりも、実際にどのような働き方をしているかを重視します。
の事例では、「契約書等において再委託は禁止されていなかったが、実態として個人情報の保護を理由に第三者への委託は禁止する旨の説明が元請事業者からなされていた。」と記載されています。これは、契約書では再委託が認められていても、実際には禁止されていたケースです。
このように、契約書の内容だけで判断するのではなく、実際にどのような指示や命令を受けて働いているのかを把握することが重要です。
事例3:日給制と時間外労働について
の事例では、「日給制で働いていたドライバーが、時間内に荷物を配りきれず、サービス残業を強いられていた」という状況が問題視されていました。
時間外労働とは、どのような場合を指すのでしょうか?
労働基準法では、労働時間は1日8時間、週40時間を超えてはならないと定められています。これを超える労働時間については、会社は割増賃金を支払う義務があります。
の事例では、「業務時間内に荷物を配りきれない場合は、1時間当たり1,000円が別途支給される。」とありますが、これは時間外労働に対する割増賃金が適切に支払われているかどうかを判断する必要があります。
労働者として認められるためには、労働時間に応じた適切な報酬が支払われていることが重要です。
まとめ
今回は、軽貨物ドライバーの事例を通して、「指揮監督」「拘束性」「報酬」について詳しく解説しました。
これらの要素は、労働者性を判断する上で非常に重要となります。
前回の記事では、中学生でもわかるように「労働者」の定義と、判断が難しいケースとして軽貨物ドライバーの事例を紹介しました。今回は、これらの事例をさらに掘り下げ、より深く「労働者性」について理解を深めていきましょう。
事例から考える「指揮監督」の判断基準
前回、アプリで配送ルートや荷物の量が決められている状況を「指揮監督」と説明しました。しかし、「指揮監督」とは具体的にどのような行為を指すのでしょうか?
「労働者」と「個人事業主」を区分する上で重要な要素となるのが「使用従属性」です。この「使用従属性」を判断する基準の一つとして、「指揮監督下での労働」に関する判断基準が挙げられます。
具体的には、以下の4つの項目を総合的に判断し、「指揮監督」の有無を判断します。
1.
仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由: 会社から仕事の依頼や指示があった際に、自由に断ることができるかどうか。
2.
業務遂行上の指揮監督: 業務の進め方について、会社から具体的な指示や命令を受けているかどうか。
3.
拘束性: 実質的に拘束されている時間。
4.
代替性: 自分に代わって、他の人が業務を行うことができるかどうか。(指揮監督関係を補強する要素)
例えば、アプリで配送ルートや荷物の量が決められている場合は、ドライバーが自由に断ることができないため、「仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由」がないと判断される可能性があります。
また、配送状況が常にアプリで把握され、会社から指示を受ける状況は、「業務遂行上の指揮監督」に該当します。
前回の記事で紹介した事例では、「配送状況に応じて元請事業者から随時指示がなされているほか、配送時のルールについても定められ、指示が行われていた」ことから、指揮監督ありと判断されています。
さらに、「拘束性」についても具体的な判断基準があります。 前回の記事で紹介した事例では、「始業・終業時刻の定めはないが、1日の作業時間を12時間以内にすることを前提に、1日当たりの配送を行う荷物量が定められている」ことから、実質的に拘束されている時間が一定程度定められていると判断され、「拘束性」ありと判断されました。
このように、一見自由な働き方に見える軽貨物ドライバーでも、指揮監督や拘束性の高さから「労働者」と判断されるケースがあることを理解しておきましょう。
契約書と異なる働き方をしている場合は?
前回の記事で、「契約上は自由に仕事を受けられることになっていましたが、実際には断ることができませんでした。」という事例を紹介しましたね。では、契約書の内容と実際の働き方が異なる場合、どちらが優先されるのでしょうか?
結論から言うと、実際の働き方が優先されます。 労働基準法は、労働者を保護することを目的としているため、形式的な契約内容よりも、実際にどのような働き方をしているかを重視します。
前回の資料にある事例では、「契約書等において再委託は禁止されていなかったが、実態として個人情報の保護を理由に第三者への委託は禁止する旨の説明が元請事業者からなされていた。」と記載されています。
これは、契約書では再委託が認められていても、実際には禁止されていたケースです。
このように、契約書の内容だけで判断するのではなく、実際にどのような指示や命令を受けて働いているのかを把握することが重要です。
サービス残業は許される? 時間外労働の考え方
最後に、前回の記事で紹介した「日給制で働いていたドライバーが、時間内に荷物を配りきれず、サービス残業を強いられていた」という事例について考えてみましょう。
労働基準法では、労働時間は1日8時間、週40時間を超えてはならないと定められています。 これを超える労働時間については、会社は割増賃金を支払う義務があります。
前回の資料内の事例では、「業務時間内に荷物を配りきれない場合は、1時間当たり1,000円が別途支給される。」とあります。
これは時間外労働に対する割増賃金が適切に支払われているかどうかを判断する必要があります。
労働者として認められるためには、労働時間に応じた適切な報酬が支払われていることが重要です。
まとめ:自分の働き方をしっかりと確認しよう!
今回は、軽貨物ドライバーの事例を通して、「指揮監督」「拘束性」「報酬」について詳しく解説しました。
これらの要素は、労働者性を判断する上で非常に重要となります。
弁護士田村優介へのお問合せはこちらから!
顧問契約のご検討は時間無制限・無料でご相談承ります。ぜひお気軽にお問合せください
ブログの更新情報はTwitter(X)でお知らせしています!フォローお願いします
東京・池袋 社長の夢を叶えるコーチ弁護士・田村優介(第二東京弁護士会・城北法律事務所)
コメント