池袋の弁護士、田村優介です!
「共同創業者と揉めてしまった…」「弁護士に相談すべき?」そんな悩みをお持ちのあなたへ。
スタートアップにおける「仲間割れ」は、事業の失敗に直結する深刻な問題です。本記事では、よくある仲間割れの原因から、弁護士に相談するメリット、そして、トラブルを未然に防ぐための契約書の重要性について、弁護士監修のもと分かりやすく解説します。事前にしっかりと対策をしておくことで、不要なトラブルを回避し、事業の成功へと繋げましょう。
1. 共同創業者の仲間割れはなぜ起こるのか?
夢と希望に満ちたスタートアップ。しかし、その道のりは決して平坦ではなく、苦楽を共にするはずの共同創業者同士が、ある日突然「袂を分かつ」という事態も珍しくありません。なぜ、このような悲しい結末を迎えてしまうのでしょうか?その原因を探ってみましょう。
1.1 よくある仲間割れの原因
共同創業者の仲間割れは、様々な要因が複雑に絡み合って発生します。ここでは、よくある原因を具体的に見ていきましょう。
1.1.1 1. 事業ビジョンや方向性の違い
創業当初は共通の目標を掲げていても、事業が成長するにつれて、それぞれの描くビジョンや進むべき方向性にズレが生じることがあります。例えば、「堅実な経営で安定を目指す」という方針を重視するメンバーと、「多少のリスクを冒しても新規事業に挑戦すべき」と考えるメンバーとの間で意見が対立するケースなどが挙げられます。このようなビジョンや方向性の違いは、根本的な部分で食い違うため、解決が困難になるケースが多いです。
1.1.2 2. 役割分担や責任の不明確さ
スタートアップ期は、メンバーそれぞれが多岐にわたる業務を兼任することが多く、役割分担が曖昧になりがちです。明確なルールを設けずに業務を進めていると、「業務負担が偏っている」「自分の仕事が評価されていない」といった不満が生まれ、人間関係が悪化する原因となります。また、責任の所在が不明確なまま問題が発生した場合、互いに責任をなすりつけ合い、関係が崩壊してしまうケースも少なくありません。
1.1.3 3. 経営方針や意思決定に関する対立
企業の成長戦略、資金調達の方法、採用方針など、経営に関する重要な意思決定において、意見が対立することがあります。例えば、外部投資家からの資金調達に積極的なメンバーと、自分たちのペースで成長したいと考えるメンバーとの間で意見が衝突するケースなどが考えられます。このような経営方針や意思決定に関する対立は、会社の将来を左右する重要な問題であるため、深刻な対立に発展する可能性があります。
1.1.4 4. コミュニケーション不足
日々の業務に追われる中で、メンバー間のコミュニケーションがおろそかになってしまうことがあります。互いの考えや状況を共有する機会が減ると、誤解や不信感が生まれやすくなり、小さな問題が大きなトラブルに発展する可能性もあります。また、普段から腹を割って話し合える関係を築けていない場合、問題を早期に解決することが難しく、関係が悪化する一方になってしまうことも考えられます。
1.1.5 5. 報酬や待遇への不満
スタートアップ期は、資金が限られているため、給与や待遇が十分でない場合も少なくありません。そのような状況下で、自分の貢献に見合った報酬が得られていないと感じたり、他のメンバーと待遇に差があると感じたりすると、不満が募り、関係が悪化する原因となります。特に、会社の業績が向上しているにも関わらず、報酬に反映されない場合は、不満が爆発する可能性が高くなります。
1.1.6 6. 企業文化や価値観の不一致
創業当初は、メンバー間の価値観が似ていることが多いですが、事業の成長やメンバーの増員に伴い、企業文化や価値観にズレが生じることがあります。例えば、「成果主義で競争を重視する文化」と「協調性を重視する文化」のように、全く異なる価値観を持つメンバーが集まった場合、衝突が起こりやすくなります。このような企業文化や価値観の不一致は、社内の雰囲気を悪化させ、メンバーのモチベーション低下にも繋がる可能性があります。
1.1.7 7. プライベートな関係性の変化
共同創業者は、友人や家族など、プライベートな関係性からスタートアップを始めるケースも少なくありません。しかし、ビジネス上の関係が深まるにつれて、プライベートな関係にも影響が出ることがあります。例えば、事業がうまくいかなかった場合、責任の所在を巡って友人関係が壊れてしまうケースや、仕事上のストレスからプライベートでも衝突してしまうケースなどが挙げられます。このように、プライベートな関係性の変化が、ビジネスにも悪影響を及ぼす可能性があります。
1.2 最初は仲が良くても関係性が変化するリスク
多くのスタートアップは、友人や家族など、元々は良好な関係性を持つ者同士で起業します。しかし、ビジネスという共通の目標を追い求める過程で、以下の様な理由から、当初の良好な関係性が変化してしまうリスクがあります。
1.2.1 1. 利害関係の変化
ビジネスが軌道に乗り始めると、利益の分配や責任の所在など、シビアな問題に直面します。当初は「お互い様」という意識で乗り切れても、金銭が絡む問題や責任問題が発生すると、利害関係が対立しやすくなります。特に、事業の成功に伴い、金銭的な余裕が生まれることで、金銭感覚の違いや利益配分に対する不満が表面化するケースも少なくありません。
1.2.2 2. 立場や役割の変化
事業の成長に伴い、組織改編や役割分担の見直しが行われることがあります。当初は対等な立場だったとしても、経営者と従業員、上司と部下など、立場や役割が明確になることで、意識や行動に変化が生じます。また、外部から経験豊富な人材が参画することで、創業メンバー間の力関係が変化し、関係性が不安定になるケースも考えられます。
1.2.3 3. ストレスやプレッシャー
スタートアップは、常に変化と挑戦の連続であり、経営者には大きなストレスやプレッシャーがのしかかります。限られた時間と資源の中で、事業を成功させなければならないというプレッシャーから、創業メンバー同士で衝突したり、感情的に対立してしまうことがあります。また、ストレスや疲労から、コミュニケーション不足や誤解が生じやすくなることも考えられます。
これらのリスクを踏まえ、共同創業者は、「いつまでも仲良し」という幻想を捨て、ビジネスパートナーとして、お互いを尊重し、フェアな関係を築くことが重要です。また、経済産業省のスタートアップ支援など、外部のサポートを活用しながら、困難な状況を乗り越えていくことが大切です。
2. 弁護士に相談するメリット
共同創業者の仲間割れは、会社法、契約法、商法など、さまざまな法律が関係する複雑な問題です。感情的な対立も伴い、自分たちだけで解決することは容易ではありません。そこで、法律の専門家である弁護士に相談するメリットは大きく、主に以下の点が挙げられます。
2.1 弁護士に相談するタイミング
弁護士に相談するタイミングは早ければ早いほど、紛争を未然に防ぐ、あるいは早期解決を図る上で有利に働きます。具体的には、以下のようなタイミングで相談することをおすすめします。
2.1.1 起業準備段階
- 事業内容や役割分担を決定する段階
- 出資比率や株式の保有割合などを決める段階
- 共同創業契約書を作成する段階
起業準備段階で弁護士に相談することで、後々のトラブルを避けるための契約書の作成や、紛争発生のリスクを最小限に抑えるためのアドバイスを受けることができます。弁護士は、過去の判例や経験に基づいた法的観点から、潜在的なリスクを洗い出し、未然に防ぐための対策を提案します。
2.1.2 事業開始後、関係が悪化し始めた段階
- 意見の対立が顕著になり、話し合いで解決できない場合
- 一方的な経営方針や金銭の使い込みなどが疑われる場合
- 共同創業者の間で信頼関係が崩壊し、事業継続が困難になった場合
関係が悪化し始めた段階でも、弁護士に相談することで、冷静な第三者としての視点から問題解決の糸口を見出すことが期待できます。弁護士は、当事者間の感情的な対立を緩和し、冷静な話し合いを促進する役割も担います。また、法的措置が必要な場合には、法的根拠に基づいた適切なアドバイスやサポートを提供します。
法的トラブルに発展する前に、早期に弁護士に相談することで、時間や費用の無駄を省き、より良い解決策を見出す可能性が高まります。
2.2 弁護士費用
弁護士費用は、依頼する内容や弁護士によって異なります。一般的には、着手金、報酬金、実費に分かれており、それぞれ以下の内容です。
費用区分 | 内容 |
---|---|
着手金 | 弁護士に依頼する際に支払う費用で、主に事件処理の開始費用として充てられます。 |
報酬金 | 事件処理の結果に応じて支払う費用で、成功報酬型と時間報酬型があります。 |
実費 | 交通費や通信費、印紙代など、事件処理にかかった実費です。 |
弁護士費用は、弁護士会によって報酬基準が定められていますが、事案の難易度や処理時間などによって増減することがあります。弁護士に依頼する際は、費用について事前にしっかりと確認することが重要です。
弁護士に依頼することで、法的トラブルを早期に解決し、事業への影響を最小限に抑えることが期待できます。また、弁護士に依頼することで、精神的な負担を軽減し、事業に専念できるというメリットもあります。
3. 仲間割れを防ぐためにすべきこと
「出る杭は打たれる」ということわざがあるように、新しいことを始めようとするスタートアップ企業は、様々な困難やトラブルに直面することがあります。その中でも、共同創業者間の仲間割れは、企業の存続を揺るがすほどの深刻な問題となりかねません。せっかく同じ目標に向かってスタートした事業を、人間関係のもつれで失ってしまうことのないよう、予防策を徹底することが重要です。
仲間割れは、些細な誤解や意見の食い違いが、時間の経過とともに大きな亀裂へと発展していくケースが少なくありません。起業当初は、互いの熱意や信頼感によって、小さな問題が見過ごされがちです。しかし、事業が成長し、資金や経営方針、外部との関係など、重要な意思決定が増えていくにつれて、当初は表面化していなかった価値観やビジョンの違いが、次第に顕在化してくることがあります。互いの貢献度や報酬に対する不満、将来の事業展開に対する意見の対立などが、感情的な対立を招き、修復困難な状況に陥ってしまうケースも少なくありません。
このような事態を避けるためには、創業前にしっかりと話し合い、共通認識を持つことが重要です。また、事業の進捗状況に合わせて、定期的にコミュニケーションをとり、互いの考えや状況を共有することで、誤解や不信感の芽を摘み取ることが大切です。さらに、万が一、意見の相違が生じた場合でも、冷静に話し合い、合意形成を目指すためのルールを事前に決めておくことが、後々のトラブル防止に繋がります。
3.1 事業計画は詳細に決定する
「夢は大きく」という言葉があるように、スタートアップ企業は、大きな夢と野心を抱いて事業をスタートさせます。しかし、夢を実現するためには、具体的な計画が必要です。事業計画は、企業の羅針盤となる重要なものであり、共同創業者間で、事業内容、目標とする市場、顧客ターゲット、収益モデルなどを明確に共有しておくことが重要です。事業計画が曖昧なままスタートしてしまうと、後々、方向性の違いや意見の対立が生じ、仲間割れの原因になりかねません。
例えば、飲食店を例に考えてみましょう。共同創業者の間で、「ターゲットは誰なのか」「客単価はどの程度に設定するのか」「どのようなメニューを提供するのか」「店舗の雰囲気や立地はどうするのか」といった具体的なイメージが共有できていない場合、後々トラブルが発生する可能性があります。Aさんは、高級食材を使ったコース料理を提供する隠れ家的なレストランをイメージしていたのに対し、Bさんは、若い世代をターゲットにしたカジュアルな居酒屋を想定していた、というような食い違いが生じるかもしれません。このような事態を避けるためには、創業前に、事業計画を詳細にわたって具体的に検討し、文書化しておくことが重要です。
3.1.1 市場調査の重要性
事業計画を策定する上で、市場調査は欠かせません。ターゲットとする市場規模、競合状況、顧客ニーズなどを分析することで、事業の成功可能性を高めることができます。共同創業者間で、市場調査の結果を共有し、共通認識を持つことが重要です。例えば、新しいスマートフォンアプリを開発する場合、既存の類似アプリの利用状況やユーザーの評価、市場の成長性などを調査する必要があります。共同創業者がそれぞれ異なる調査結果を持ち寄り、議論することで、より精度の高い事業計画を策定することができます。
3.1.2 SWOT分析の実施
事業計画を策定する際には、SWOT分析を行うことも有効です。SWOT分析とは、企業の「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)」を分析するフレームワークです。共同創業者間で、自社の強みや弱み、市場機会や脅威について議論することで、より具体的な事業計画を策定することができます。例えば、新しいECサイトを立ち上げる場合、自社の強みは「高品質な商品の品揃え」、弱みは「ブランド力の低さ」、市場機会は「オンラインショッピングの普及」、脅威は「大手ECサイトとの競争激化」といった分析結果が考えられます。SWOT分析の結果を踏まえ、強みを活かし、弱みを克服するための戦略を検討することで、より実現性の高い事業計画を策定することができます。
3.2 役割分担を明確にする
スタートアップ企業において、役割分担は非常に重要です。共同創業者それぞれの得意分野や経験を活かし、効率的に事業を進めるために、誰がどのような役割を担うのかを明確に決めておく必要があります。役割分担が曖昧なままスタートしてしまうと、責任の所在が不明確になり、トラブルが発生した場合に、誰が対応すべきか分からず、対応が遅れてしまう可能性があります。また、互いの仕事に対する貢献度が見えにくくなり、不満や不信感に繋がり、人間関係が悪化する原因にもなりかねません。
例えば、AさんとBさんが共同でWebサービスを開発するスタートアップ企業を設立した場合、Aさんはシステム開発、Bさんはマーケティングを担当すると決め、それぞれの役割を明確にする必要があります。Aさんは、プログラミングやサーバー管理などの技術的な業務に集中し、Bさんは、市場調査や広告戦略、顧客獲得などの業務に注力することで、効率的に事業を進めることができます。役割分担を明確にすることで、責任感と当事者意識が生まれ、互いに協力し合いながら、目標達成に向けて努力することができるようになります。
3.2.1 役割分担表の作成
役割分担を明確にするためには、役割分担表を作成することが有効です。役割分担表には、誰が、どのような業務を担当するのかを具体的に記載します。また、それぞれの役割の責任範囲や権限を明確にすることも重要です。役割分担表を作成することで、共同創業者間で、役割分担に対する共通認識を持つことができます。また、後から役割分担を変更する場合にも、役割分担表を見直すことで、スムーズに変更することができます。
役割 | 担当者 | 業務内容 | 責任範囲 | 権限 |
---|---|---|---|---|
代表取締役 | Aさん | 会社の経営全般、資金調達、渉外など | 会社の経営に関する最終責任 | 会社の重要な契約締結権、資金調達の決定権など |
取締役(開発担当) | Bさん | システム開発、サーバー管理、技術的なサポートなど | システム開発の進捗管理、品質管理など | システム開発に関する技術的な決定権など |
取締役(マーケティング担当) | Cさん | 市場調査、広告戦略、顧客獲得、広報活動など | マーケティング戦略の立案・実行、顧客獲得数の達成など | マーケティング予算の執行権、広告掲載の決定権など |
3.2.2 定期的な見直し
事業の状況や成長段階に応じて、役割分担を見直すことも重要です。例えば、事業が拡大し、従業員が増えた場合には、新たな役割を設けたり、既存の役割を細分化したりする必要があるかもしれません。また、共同創業者のスキルや経験、興味関心が変化した場合には、それに合わせて役割分担を変更することも考えられます。定期的に役割分担を見直すことで、状況の変化に柔軟に対応し、より効率的に事業を進めることができます。
3.3 資金調達の方法を事前に決めておく
スタートアップ企業にとって、資金調達は避けて通れない課題です。事業を軌道に乗せ、成長させていくためには、必要な資金を、適切なタイミングで調達する必要があります。資金調達には、自己資金、借入、投資など、様々な方法がありますが、共同創業者間で、どのような方法で資金調達を行うのか、事前にしっかりと話し合い、合意しておくことが重要です。資金調達方法によって、資金調達できる金額や返済義務の有無、株式の希薄化などが異なるため、安易に決定してしまうと、後々、意見の対立やトラブルに発展する可能性があります。
例えば、創業当初は、自己資金で賄える範囲で事業をスタートし、一定の売上目標を達成したら、銀行から融資を受けるという方法もあれば、事業計画段階で、ベンチャーキャピタルから出資を受けるという方法もあります。資金調達方法を事前に決めておくことで、資金調達活動がスムーズに進み、事業に集中することができます。また、資金調達に関するトラブルを未然に防ぐことができます。
3.3.1 資金調達計画の作成
資金調達計画は、いつ、どの程度の資金を、どのような方法で調達するかを具体的に計画したものです。資金調達計画を作成することで、資金調達の目標金額や時期、資金使途を明確にすることができます。また、資金調達に伴うリスクや課題を事前に洗い出すこともできます。資金調達計画は、投資家や金融機関に提出する事業計画書にも記載される重要な資料となります。
時期 | 調達金額 | 調達方法 | 資金使途 |
---|---|---|---|
創業時 | 1,000万円 | 自己資金 | 開発費、人件費、事務所賃料など |
1年後 | 3,000万円 | ベンチャーキャピタルからの出資 | マーケティング費用、人材採用費用、設備投資費用など |
3年後 | 5,000万円 | 銀行融資 | 事業拡大のための運転資金、新規事業開発費用など |
3.3.2 資金調達に関する知識の習得
資金調達に関する知識を深めておくことも重要です。資金調達には、様々な方法があり、それぞれメリットやデメリットがあります。また、資金調達に関する法律や規制も存在します。共同創業者が、資金調達に関する知識を身につけることで、より有利な条件で資金調達を行うことができます。また、資金調達に関するトラブルを未然に防ぐことができます。
資金調達の方法を事前に決めておくことは、スタートアップ企業にとって、非常に重要なことです。共同創業者間で、しっかりと話し合い、合意形成を図ることで、資金調達をスムーズに進め、事業の成功に繋げましょう。
4. 共同創業者の仲間割れを防ぐ契約書の内容
共同創業者の仲間割れを防ぎ、スタートアップの成功を確実なものにするためには、綿密な契約書の作成が不可欠です。契約書は、ビジネスにおける設計図としての役割を果たし、後々のトラブルを未然に防ぐための重要なツールとなります。ここでは、共同創業者の契約書に盛り込むべき重要な項目について詳しく解説していきます。
4.1 出資と株式の割合
スタートアップの初期段階において、出資と株式の割合は、共同創業者間の equity を明確にする上で非常に重要です。明確な取り決めを欠いたまま事業が成長した場合、後々、深刻な紛争に発展する可能性があります。出資と株式の割合を決める際には、将来の資金調達や事業拡大の可能性も考慮する必要があります。また、株式の譲渡制限や、株主総会における議決権についても、あらかじめ明確なルールを定めておくことが重要です。
- 各共同創業者の出資額と、それに応じた株式の保有割合を明確に定める。
- 将来の出資の可能性や、その際の株式の希薄化についても考慮する。
- 株式の譲渡制限を設けることで、外部への株式流出を防ぎ、経営の安定性を確保する。
4.2 経営権に関する事項
共同創業者の関係において、経営権の所在は事業の方向性を左右する重要な要素です。誰が最終的な決定権を持つのか、意見が対立した場合の解決方法はどのようにするのかなどを明確に定めておく必要があります。代表取締役の選任方法、取締役会の構成、議決権の配分などを具体的に定めることで、透明性と公平性を確保し、後々の紛争を予防します。
- 代表取締役の選任方法や解任の要件を明確にする。
- 取締役会の構成員や、それぞれの役割、権限を明確にする。
- 事業の重要な意思決定における議決権の配分を明確にする。
4.3 業務分担と報酬
共同創業者のそれぞれが、どの業務をどの程度担当するのか、また、その対価としてどのような報酬を得るのかを明確にすることは、スタートアップの円滑な運営に欠かせません。業務分担が曖昧なままだと、責任の所在が不明確になり、トラブルに発展する可能性があります。また、報酬についても、業績連動型にするのか、固定給にするのかなど、あらかじめ明確なルールを定めておくことが重要です。
- 各共同創業者の担当業務を具体的に明記する。
- 業務内容や責任の範囲に変更が生じた場合の手続きを定める。
- 報酬額や支払い方法、昇給や賞与に関する規定を明確にする。
4.4 競業避止義務と秘密保持義務
スタートアップにとって、競業避止義務と秘密保持義務は、事業の優位性を守り、持続的な成長を確保するために不可欠な要素です。共同創業者には、競合他社での就業や、類似事業の立ち上げを制限する競業避止義務と、会社の機密情報や顧客情報を保護する秘密保持義務を課す必要があります。これらの義務に違反した場合のペナルティについても、契約書に明記しておくことが重要です。
4.4.1 競業避止義務
- 在職中および退職後一定期間、競合他社での就業や、類似事業の立ち上げを禁止する。
- 禁止する範囲を、事業内容、地域、期間などを具体的に定める。
- 違反した場合の損害賠償請求など、ペナルティを明確にする。
4.4.2 秘密保持義務
- 会社の機密情報や顧客情報など、守秘義務の対象となる情報を明確に定義する。
- 情報の利用範囲や開示の制限を明確にする。
- 違反した場合の損害賠償請求など、ペナルティを明確にする。
4.5 責任の所在
事業を行う上で、予期せぬトラブルや債務が発生する可能性は避けられません。共同創業者の責任の所在を明確にしておくことは、こうした事態が発生した場合の対処法を定め、紛争を未然に防ぐために重要です。共同事業の場合、原則として、各共同創業者は、自身が行った行為について無限責任を負います。ただし、契約書で責任の範囲を限定したり、責任を分担したりすることも可能です。
- 債務発生時の責任の範囲や、その分担方法を明確にする。
- 損害賠償請求が発生した場合の責任の所在を明確にする。
- 責任保険の加入について検討する。
4.6 紛争解決手続き
共同創業者の間で意見の対立や紛争が生じた場合に備え、円滑かつ迅速な解決を図るための手続きをあらかじめ定めておくことが重要です。具体的には、話し合いによる解決を優先するのか、調停や仲裁などの裁判外紛争解決手続きを利用するのか、訴訟を提起する場合の管轄裁判所をどこにするのかなどを定めます。紛争解決手続きを明確にすることで、長期的な紛争や関係の悪化を避けることができます。
- 話し合いによる解決を試みる期間や方法を定める。
- 調停や仲裁などの裁判外紛争解決手続きの利用について検討する。
- 訴訟を提起する場合の管轄裁判所をあらかじめ定めておく。
4.7 契約書作成時の注意点
契約書は、単に形式的に作成するのではなく、将来発生する可能性のある問題を予測し、その解決策をあらかじめ盛り込んでおくことが重要です。そのため、弁護士などの専門家に相談し、法的観点からのアドバイスを受けることが不可欠です。また、公的機関が提供するモデル契約書を参考にしたり、専門書やウェブサイトで情報収集したりすることも有効です。契約書は、事業の成長や変化に合わせて定期的に見直し、必要に応じて内容を更新することが重要です。
- 弁護士などの専門家に相談し、法的観点からのアドバイスを受ける。
- 公的機関が提供するモデル契約書を参考にする。
- 専門書やウェブサイトで情報収集する。
- 事業の成長や変化に合わせて定期的に見直し、必要に応じて内容を更新する。
5. 契約書作成時の注意点
共同創業者の仲間割れを防ぐための契約書は、作成時によく注意する必要があります。注意点を怠ると、後々トラブルが発生する可能性があります。ここでは、契約書作成時に特に注意すべき点について解説します。
5.1 弁護士への依頼
契約書の作成は、弁護士に依頼することが推奨されます。弁護士は、法律の専門家として、契約書の内容が法的に有効かつ、当事者の意図に沿ったものになるよう、アドバイスやサポートを行います。また、将来的なトラブルを予測し、未然に防ぐための条項を盛り込むなど、専門的な知識と経験に基づいた契約書作成が可能です。
弁護士に依頼するメリットは、以下の点が挙げられます。
- 法的に有効な契約書を作成できる
- トラブル発生時のリスクを軽減できる
- 専門家の意見を参考に、より良い契約内容にできる
5.1.1 弁護士選びのポイント
弁護士に依頼する場合、複数の弁護士から見積もりを取り、比較検討することが重要です。費用や専門分野、実績などを考慮し、信頼できる弁護士を選びましょう。また、弁護士との相性も重要です。気軽に相談できる弁護士を選ぶようにしましょう。
5.2 契約内容の理解
契約書は、内容をしっかりと理解することが重要です。専門用語や複雑な条項が含まれている場合もあるため、不明点は弁護士に確認し、納得した上で署名しましょう。契約書の内容を理解せずに署名すると、後々、不利な立場に立たされる可能性があります。
5.2.1 契約書は必ず読み合わせを
契約書の作成後、当事者間で読み合わせを行うことも重要です。読み合わせの場を設けることで、認識の齟齬や誤解を防ぎ、合意内容を明確化できます。また、疑問点があれば、その場で解消できます。読み合わせは、弁護士にも同席してもらうと、より安心です。
5.3 将来を見据えた内容
スタートアップ企業は、事業内容や組織体制が変化しやすいという特徴があります。そのため、契約書の内容も、将来的な変化に対応できるよう、柔軟性を持たせることが重要です。例えば、事業内容の変更や新たな出資者の加入など、将来起こりうる事態を想定し、必要に応じて契約内容を見直せる条項を盛り込むと良いでしょう。
5.3.1 定期的な見直し
また、定期的に契約書を見直し、必要に応じて内容を更新することも重要です。事業の状況や法律の改正などに応じて、契約内容が現状にそぐわなくなったり、不備が生じたりする可能性があります。定期的な見直しによって、トラブルを未然に防ぐことができます。
5.4 紛争解決
万が一、共同創業者間で紛争が発生した場合に備え、紛争解決の方法について、あらかじめ契約書に明記しておくことが重要です。具体的には、裁判外紛争解決手続(ADR)や仲裁など、どのような方法で解決を目指すのかを定めておきます。また、管轄裁判所を明記しておくことも重要です。紛争解決に関する条項を設けておくことで、紛争発生時の対応をスムーズに行うことができます。
5.4.1 具体的な紛争解決方法の例
方法 | 内容 |
---|---|
調停 | 裁判所を介して、当事者間の話し合いにより解決を目指す方法 |
仲裁 | 第三者である仲裁人の判断に委ねて解決する方法 |
5.5 記録の保管
契約書は、紛失や破損に備え、適切に保管する必要があります。原本は、安全な場所に保管し、関係者全員が保管場所を把握しておくようにしましょう。また、デジタルデータとしても保管しておくと、より安心です。
6. まとめ
共同創業者は、まるで結婚するようなもの。はじめのうちは、うまくいくと思っていても、一緒に事業を進めていくうちに、意見の食い違いや経営方針の違いなど、様々な問題が出てくる可能性があります。そうならないために、事前にしっかりと話し合い、契約書を作成しておくことが大切です。契約書は、お互いの権利や義務を明確にし、将来的なトラブルを未然に防ぐためのものです。弁護士に相談することで、より安全かつスムーズに事業を進めることができるでしょう。
弁護士田村優介へのお問合せはこちらから!
顧問契約のご検討は時間無制限・無料でご相談承ります。ぜひお気軽にお問合せください
ブログの更新情報はTwitter(X)でお知らせしています!フォローお願いします
東京・池袋 社長の夢を叶えるコーチ弁護士・田村優介(第二東京弁護士会・城北法律事務所)
コメント